武者良太 (@mmmryo)
2016年10月7日。AK300/AK320/AK380のオプションユニットであるAK RECORDERが発売されました…のは、このサイトをご覧のみなさまならご存じのとおり。本来プレーヤーであるAK3xxシリーズにプロフェッショナルクオリティの録音機能を持たせるドッキングユニットで、ガンダムでいえばGファイターであり、フルアーマーであり、デンドロビウムのような存在といえるでしょう。
最高で5.6MHz DSD・384kHz/32bit PCMの解像度で録音できるユニットです。底面についたゴム足からも、スタジオでの運用を前提として作られていることがうかがえます。そもそもAK3xxと合わせたらお値段いくらですか! というツッコミを期待してアユートさんに「AKでフィールドレコーディングしてみませんか?」と言ってみたら。
このような事態となりました。いいのでしょうか。
さて、僕から見たAK RECORDERの最大の特徴がマイク非搭載だということ。AK RECORDERとAK3xxの他にもマイクが必要だということ。「もっとコストかかるじゃないか!」と思うか、「好きなマイクが使えるんだ!」と思うか。皆さんはどうですか? 僕は圧倒的に後者でした。
AKシリーズのオーナーであれば、音の出口となるヘッドフォン/イヤホンで聴く音楽の質感が大きく変容することを実体験していることでしょう。では、音の入り口となるマイクで音は変わるのでしょうか。ええ、変わるのです。それも圧倒的に。
ボーカルマイク1つとっても、キャラクター性がでてくる音域(周波数帯域)や指向性が異なります。2011年5月13日放送のタモリ倶楽部でマイクがフィーチャーされていましたが、「え~毎度おなじみ流浪の番組、タモリ倶楽部でございます」でも声の質感や距離感が大きく異なるんですよ。
またハイレゾ化した古き音源を聴くと、数十年前のコンサートホールの空気感ってこうだったんだ!という、フレッシュなトーンに驚きますよね。そうなのです。古いマイクだからといってその性能は侮れないのです。
ヘッドホン沼、イヤホン沼という言葉がありますが、AK RECORDERを使い始めるとマイク沼にもハマりそうな世界線にたどりつきそうでコワい。でも、自分だけのいい音を録りたい、という新たな願いも生まれてくること、確実です。
AK RECORDERとAK380を持って訪れたのは東京・世田谷にある等々力渓谷。23区内のなかではトップクラスの大自然地域です。名勝です。散歩を楽しむ方、お参りする方、カメラ片手に撮影されている方に混じって、川の音を録音してきました。
使用したマイクはオーディオテクニカのAT9943。5年以上愛用してきたマイクゆえにキズが多いのはご容赦ください。
エネルギーバランスはフラットで色づけ少なく、オールマイティに使えるステレオマイクです。X-Y方式でマイクの角度を90度/120度でセッティングが可能。さらにフジヤエービックのaudio-technica AT9943特注ケーブルを用いることでキャノン3pinオス×2での出力を行い、AK RECORDER付属のミニXLR→XLR変換ケーブルを介することでAK RECORDERと接続しています。
まずはマイクを120度にセッティングして録ってみました。左右から違う水の音が聴こえてきませんか? 左右のマイクを対抗状にセッティングするためにステレオイメージが広く、広大な雰囲気を音で切り取ることができます。
こちらは90度セッティングの音です。左右の音がギュッと中央に寄り、密度が高くなった反面、音場は狭くなっていますね。本来ならステージのど真ん中で、前面から来る音を捉えるのに適したセッティングといえます。一般的にはライブの録音に向いていますね。
11月3日埼玉県の入間基地で開催された入間航空祭にも、AK RECORDERとAK380を持ち込んでみました。初めて訪れたのですが、ブルーインパルスの群舞がはじまるころには通路スペースですら人でいっぱいになるほどの混み具合! 人気の高さがうかがえます。
AT9943のセッティングは90度です。指向性を狭くしても、360度全方位しかも間近に音源(歓声を上げるお客さん)がある場では、十分に広い音場を録ることができますね。
他にもジャパンカップ(11月27日東京競馬場で開催)のワンシーンを録ってきましたが、音源(悲喜交々な声を上げるお客さん)的にこのサイトで公開するのは控えざるをえないので、別枠で公開してみます。ご興味あるかたは探してみてください。
いい景色を撮ろう。カメラを持って旅行をしよう。というメインストリームに対して、フィールドレコーディングするために旅行をするというのはぶっちゃけサブカルチャーです。
でも、「ここ、いい音するな」という場に腰を下ろし、録音しながら目に入る景色をゆっくりと記憶に刻み込むのも、また楽しいアクティビティなんですよ。積ん読していた本を持ってくるもよし、撮影&録音というのも楽しい時間の過ごし方ができます。
録るという、音に対して能動的に接することができるAK RECORDER。AK300/AK320/AK380ユーザーのみなさまには、ぜひとも楽しんでいただきたいですね。
今回の音源はこちらからWAVファイルでダウンロードできます
等々力公園120度(352.8kHz/32bit) ダウンロード
等々力公園90度(352.8kHz/32bit) ダウンロード
ブルーインパルス384k(384kHz/32bit) ダウンロード
*32bit対応の、音楽再生ソフトウエア及び対応デジタルオーディオプレーヤーで聴いてください。
武者 良太
1971年生まれのガジェットライター。ライター・エディター歴は27年。現在は音響機器にスマートフォン、ITビジネスにAI、最先端技術など、ハードウェア面に限らず、ガジェット市場を構成する周辺領域の取材・記事作成も担当する。音楽との関わりは幼少期にピアノ、小学時代に合唱、中学時代よりパソコンを使っての打ち込みをはじめ、90年代にはDJ・VJ・ストリートダンサーとしてクラブカルチャーを間近に感じながら過ごす。現在はオーディオ機器評論家としても活動している。
https://twitter.com/mmmryo